活動内容

NOWPAPの業務について

 

地域調整ユニット(RCU)の調整のもと、各加盟国に設立されている4つの地域活動センター(RACs)が行なうNOWPAPの活動は、地球上で人間の活動や自然の変化の影響を最も受けている地域の1つであるNOWPAP地域にて、増加し続ける海洋・沿岸の環境劣化を防ぎ、回復させることを目的として、以下の4つの分野に集約されます。

 

     1)  生態系ベースでの沿岸・河川流域総合管理を支援

自然的様相と社会経済的様相という対照的な多様性を持ち合わせている海洋・沿岸エリアにおいて、北西太平洋の海洋と沿岸環境の持続可能な開発には、生態系ベースのアプローチが最も効果的であるということが明らかとなっています。NOWPAPは協力機関とともに、健全で生産性のある海洋・沿岸生態系のために、加盟国が生態系ベースの管理政策、手段を適用し、実践することを支援します。

 

     2)  海洋と沿岸環境の状態アセスメント 

NOWPAPの海洋と沿岸への環境負荷のモニタリング及びその分析については、総合生態系アセスメントリポートに定期的にまとめられています。ウラジオストクを拠点とする汚染モニタリング地域活動センター(POMRAC)The Pollution Monitoring Regional Activity Centre (POMRAC)が、海洋や沿岸に直接流入する汚染はもとより、特に大気や河川起因の海洋汚染のモニタリングを担っています。POMRACはNOWPAPの重要な成果品である「海洋環境報告書State of the Marine Environment Report (SOMER)」を発表しています。SOMER第3版は、数年以内に発表を予定しており、北西太平洋の海洋と沿岸の生態系にもたらされる大気由来、陸上・海上起因の汚染の脅威について総合的な評価を示すものとなります。さらにPOMRACは、人為的負荷、外来種、富栄養化、汚染、海洋ごみなどが地域の海洋と沿岸環境へ与える脅威を評価するためのベンチマークとして、「環境質目標」を策定しました。環境質目標のうち、SDGs 指標に関連する部門別の目的と指標については、現在、作成中です。

 

北京に拠点を置くデータ・情報ネットワーク地域活動センター(DINRAC)The Data and Information Network Regional Activity Centre (DINRAC)は、北西太平洋の海洋と沿岸環境について地域協力と情報共有を推進しています。DINRACは主要な環境データ、NOWPAPの沿岸・海洋の環境についての地理情報システムとリモートセンシングの適用、海洋ごみ、沿岸・海洋の自然保護区、NOWPAP出版物、NOWPAP機関と専門家についてのデータベースを管理しています(DINRACのHPを参照)。DINRACはさらに、海洋ごみグローバルパートナーシップの北西太平洋地域ノードも担当しています。

 

     3)  陸上・海上起因の汚染の予防と削減 

人口過密状態のNOWPAP地域は主要な商業用海上ルートを抱える国際的な経済有力地であり、増加し続ける海洋ごみ、富栄養化、油と化学物質の海上流出事故など、様々な人為的プレッシャーにさらされています。NOWPAPは、能力強化、データ・情報、陸上・海上起因汚染の予防と削減のためのガイドラインや最善策などで加盟国を支援しています。 新しく課題となっているのはマイクロプラスチックです。世界で最も混雑する海上輸送エリアの1つであるNOWPAP地域は、油や危険・有害物質(HNS)の海上流出の危険性が非常に高い地域です。UNEPと国際海事機関(IMO)の共同で韓国の大田に設立した海洋環境緊急準備・対応地域活動センター(MERRAC)The Marine Environmental Emergency Preparedness and Response Regional Activity Centre (MERRAC) は、2008年に採択された「NOWPAP地域油及びHNS流出緊急時計画 NOWPAP Regional Oil and HNS Spill Contingency Plan (RCP)」をもとに、海洋汚染緊急時対応での地域協力を推進しています。加盟国の海事担当者とともに、本格的な油・HNS流出対応演習を定期的に開催しています。

 

海洋ごみについては、NOWPAPは 2005 年より、増加の一途であるその脅威に対応し、データ収集、アセスメント、最善策の策定、地域間の調整などを行っています。2008年に海洋ごみに関するNOWPAP地域行動計画(RAP MALI)が盟国により採択されました。

その中核はあらゆる関係者の参画です。RACsとRCUはこの分野にて、ともに活動を行っています。漁業、海運業、観光産業などを対象として、業界ごとに海洋ごみ管理ガイドラインを作成しました。市民の意識啓発と参画の向上のため、2006年より毎年、国際沿岸クリーンアップキャンペーンを各NOWPAP加盟国で開催しています。行政、民間企業、市民団体らを巻き込んで、北西太平洋の海洋ごみの削減、モニタリング、回収を行っています。地域の海洋ごみ問題は、NOWPAP及びTEMM (日中韓三カ国環境大臣会合)共同海洋ごみワークショップにて、2015年より毎年、話し合われています。

 

     4)  海洋と沿岸の生物多様性の保護

北西太平洋の動植物相の豊かさは、外来種、生息地破壊、乱獲、気候変動など、増加し続ける脅威に直面しています。NOWPAPは引き続き生物多様性アセスメントに資力を投資し、加盟国がエリア・ベースで保護策を計画し適用することを支援します。この分野の業務は、2023年を期限とする中期戦略の終了までに、海洋・沿岸生物多様性保護に関する地域行動計画を策定することで締めくくられます。富山を拠点とする特殊モニタリング・沿岸環境アセスメント地域活動センター(CEARAC)The Special Monitoring and Coastal Environmental Assessment Regional Activity Centre (CEARAC) では、外来種や有害藻の発生、富栄養化、生息地の変化などが、北西太平洋の海洋と沿岸の生物多様性にもたらす脅威をアセスメントしています。アセスメントにより、富栄養化、低酸素、有害藻の発生(HABs)、海洋ごみからの環境脅威や藻場への負荷に対する国の方針の基盤となる、重要なテクニカルデータが新たに得られています。

 

NOWPAP中期戦略(MTS)2018-2023が2018年6月に加盟国にて承認されました。この中期戦略では、「レジリエントな北西太平洋の海洋・沿岸環境 ―現在・未来の世代が長期的に恩恵を享受できるよう持続可能な開発を支援」を掲げています。MTSは、持続可能な開発2030アジェンダの中で、海洋関連の持続可能な開発目標(SDGs)を地域で遂行する際の、NOWPAPの先導者としての責任を述べています。特にSDG 14「海の豊かさを守ろう」、SDG 17 「パートナーシップで目標を達成しよう」、そしてSDGs 6、8、11、12、13、15を対象としています。

 

NOWPAPは以下の分野を重要分野として2030年までに期待する影響を得られるよう、MTS 2018-2023を実行してまいります。

 

健全で生産性のある沿岸・海洋の生態系のための沿岸及び河川流域の総合計画と管理
2030インパクト:SDG 14.2:2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う

 

定期的な海洋環境状態アセスメント

2030インパクト:SDGs 6、12、14、15及び17の支援にて、沿岸・海洋エリアの持続可能な開発の環境的側面をすべて統合した、証拠に基づく政策決定とアセスメント  

 

海洋汚染緊急時における相互支援と沿岸・海洋汚染の軽減において、効果的な対策の開発と採択
2030インパクト: SDG 14.1:2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する

 

生物多様性保護
2030インパクト:SDGs 14.1、14.2、14.5:2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。

 

連携を構築し、資力を結集して地域協力を強化

2030インパクト: 沿岸と海洋環境の持続可能な管理にて有効な地域協力を強化