行動計画

北西太平洋地域海行動計画の目的は、

「人々の健康、生態系、地域の存続性を守りながら、地域住民が長期にわたって恩恵を享受し、将来の世代のために沿岸・海洋環境を有効に利用・開発・管理すること」です。

具体的には次の3つ:

1. 沿岸・海洋環境やその資源が、今以上の悪化の防止

2. まだ回復・修復の可能性のある沿岸・海洋環境の回復・修復活動

3. 現在そして未来の地域内住民の資産としての、沿岸・海洋環境の質と資源の長期的持続可能性

 

北西太平洋地域海行動計画の短期・中期目標と課題は以下の通りです。

目標1: 地域の専門家や施設を活用し、モニタリング、データ収集システムを通じて地域の海洋環境の状況を地域ベースで調査すること

課題:

(a) 「NOWPAP地域における海洋環境研究所等一覧」を作成し、主要な科学者や研究者をその専門分野とともに紹介する。

(b) 環境プロセス、資源、それらの特性を調査し、記録する機能について、各国の科学・研究機関の調査を行う。調査では、地域の活動センターとしての役割が担えるかどうかのアセスメントも含まれ、また、その役割のためには何が必要なのかも特定する。

(c) 環境、資源とその活用について、協同のリサーチプロジェクトを策定し、研究室や調査船のような特殊資材の共用の促進を図る。また地域内の研究機関の間で、科学者、技術者、専門家の交流を進める。

(d) 地域かつ国際的な互換性のために相互較正に留意し、合意された手順に従い、具体的な指標に絞った、協同的な地域内モニタリングプロラムを構築する。

(e) 各国の関連法規制にとらわれることなく、国境をまたぐ環境の特性の調査研究やモニタリング、社会経済活動や人間のニーズや生活の質についての調査研究の強化

 

目標2: 地域の専門家や管理者が利用できる関連データの保管場所として、また、意思決定の際に利用できる包括的なデータベース・情報管理システムを作るため、環境データや情報を照合、記録する。

課題:

(a) 海洋と沿岸区域の環境の保護と管理プロジェクトについての「地域情報照会システム(RIRS)」を構築する。

(b) 電子データベース「地理情報システム(GIS)」の基礎として、1:250,000以下で地域全体のデジタル地図ベースを構築。このGISを環境や資源情報の保存場所とし、資源活用の意思決定の際に活用する。各国のGISは独自に完成・維持するが、地域全体に貢献できるよう互換性のあるものとする。

(c) 地域の包括的GIS構築の第1歩として、多くの国際機関が分野ごとに作成している類似の電子データベースの見直し

(d) GISの保守と更新業務が各国の機関で速やかに進むよう、適切な器材の配置や研修を行う。

(e)   GISの利用者はある程度限定されると思われるため、GISデータベースは、各国において印刷版「沿岸海洋資源アトラスAtlas of Coastal and Marine Resources」の作成に活用する。このアトラスは、計画立案者や管理者、学生、各種団体、旅行者や一般市民が利用できるものとする。

 

目標3: 予測できる予防手段としての、統合的な沿岸・海洋環境の計画・立案に向け、協力的なアプローチを構築する

課題:

(a) 各国の環境に関する目標、政策、方針を調査し、すべての開発計画において、初期段階から環境的側面を取り込めるようにするには、何が必要かを明らかにする。

(b) 対立の解決や、戦略の複数活用など、環境計画立案・立法で必要に応じて助言や支援を行い、また、妥当だと判断された場合にはこれらのプロセスにて一般市民の参加を促す。

(c) 環境に影響を及ぼす可能性のあるすべての開発計画に適用される「環境に関する影響調査手順」の構築において、助言と支援を行う。この手順では、考えうる影響を特定するだけではなく、代替案の検討や、影響を低減する方法の模索、軽減策の提案、モニタリング手順の設定、緊急時計画の策定や、どの関連機関がどの活動に対する責任を負うのかについても明確にする。

(d)  地域内外の大学や研究機関、特に地域内の機関については、地域の中核的研究拠点となるよう、環境関連の計画立案者、担当者を対象とした専門的な研修を開催する。

(e)  地元住民や観光客が自然を楽しめるよう、沿岸と海底に区画化したエリアを設け、特に選択したエリアを海洋公園やレクリエーション保護地とする。

(f) 地域の環境保護区を設け、地域の環境の代表例を保護する。地域の生態系を特徴づけている現存の環境資源を保護する。

 

目標4:

沿岸・海洋環境の統合管理に向け、保護と回復、保全と持続的な利用を合わせた協同アプローチを策定し、採択する。

課題:

(a) 人間の健康、特に汚染に関連した症状について、調査とモニタリングを実行する。定期的に繰り返して行われる海洋環境の地域アセスメントの結果は、NOWPAPの重要な指標となる。

(b) 相互理解の下、かつ決められた基準のもとで水域を区画化し、排水などの流出物を規制し、決められたどのような目的にも利用可能なレベルに水質を維持する。また国の定める基準に則った環境影響アセスメントの導入を義務づける。

(c)  陸上起源の廃棄物や産業排水、及び農業関連の流入を管理・削減するなど、地域内の水質改善に協力して取り組む。

(d) 地域内の水質改善の取り組みにおいて、海を発生源とする海洋汚染を予防、管理し、対処するには協力が必要であり、既存の関連国際協定を活用することが重要である。

(e) 海洋汚染緊急時への準備・対応のため、各国・地域の対応力強化について協力する。

(f) 収益と雇用の増加につながる観光業の促進は進めながら、沿岸地区のホテル建設などの観光施設の開発による影響を規制する。

 

目標5:

隣接する水域の協同管理、共通資源の保護や沿岸・海洋汚染の防止のための協力についての地域の枠組みを構築する。

課題:

(a) 各国の環境法、特に汚染の規制や枯渇性資源の搾取による環境被害の予防、生活の質の維持、危機にさらされた生物種の生息地や種の保護、持続可能性の確保についての調査を行う。

(b) 沿岸・海洋の環境とその資源の効果的な保護と管理のため、意義ある話し合いを行う。

(c) 偶発的な事故・原因による汚染に対応するための効果的な地域協力を策定する。

(d) 現存する関連国際協定に基づき、各国が参加し、地域で整合性のある環境法を策定するための助言・支援を求める。

(e) 1972年ロンドン条約、マルポール条約、OPRC条約のような環境関連の国際協定を北西太平洋地域にて進めていくことを目的として、対策を講じ、協力、調整し、情報共有を進め、共同調査を行う。

 

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